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　高橋が、一言「ヤバい」と言った。

　なぜ、ヤバいのか？

　理由は２つ。勝山がもし流されると、石柿まで一緒に流されてしまうと言うことと、もう１つは、勝山の真後ろの陸地に、あるはずもない、あの小屋が建っていたのだ。

「なぜ、あんなところに……」

　なぜ、小屋が……この時、小屋の存在に気が付いたのは、実は高橋だけで、桝本と馳谷は見ていない。

「石柿!!　早く来い!!　小屋が迫ってきたぞ!!」と高橋は叫ぶが、石柿には、声が届いていない。

　石柿は、それまでもチラチラ後ろを向いて、気にはしている様子はあったが、この時、小屋を見ていたかどうかは、本当はわからない。

「石柿っ!!　早く進めよっ!!」

　勝山が後ろから石柿を押すが、なにが起こったのか、まったく動こうとしない。

「もういいっ！」と勝山は前に出ようと、石柿を押し退けた。

　前に出ようとすると、「うわ！」と声を上げた。

「どうした!?」と高橋。

「足が……動かん！」

　この時、なにかに押さえられてるように、足が重くなったという。

　高橋が言うには、この時、向こう側にある小屋の扉は、開いていたという。

　その小屋がなにかしているのか？

　勝山は足を引きずるように、一歩ずつ前に進みだした。