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裏小屋

第5章 逃げる

「クソッタレェーーッ!! 負けるかぁーーっ!!」

 勝山がそう叫ぶ。

 高橋は、桝本に「俺の手をしっかり掴んでてくれ」と頼む。

 桝本は、頷いて、高橋の手を握る。

 高橋は、川に入り、手を伸ばす。

「かっちゃん、早く! 俺の手を掴めっ!」

「うおおおおぉーーっ!!」という叫び声とともに、体を前に倒し、勝山は高橋の手を掴んだ。

「引っ張るぞ!!」

 高橋の一声に、桝本も高橋の腕を引く。

 ようやく勝山が、陸についた。

 後は、石柿だ。

「いしがきっ!! 後は、お前や!! 早く、早く渡ってこい!!」と勝山が声をおくる。

 石柿は少しずつ進むが、何度か足が止まる。

 やがて、川の水嵩が増えてきた。

「助けて……助けて……」と石柿が泣くような声をもらす。

 高橋が「あかん、このままやと、石柿が流れてまう。ロープかなんかないか?」と言うが、周りには何も見付からない。

 長い木の棒がを見付けたが、もろく崩れてしまう。

 四人は石柿を鼓舞するように、声をおくる。だが、石柿は動かない。

 自分達が、川の中に入るわけにもいかない。

 桝本は「みんな、着替えのシャツとか、タオルをあったら出して」と言い出した。

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