
禁断背徳の鎖・絡み交錯する運命の赤糸(改訂版)
第5章 その時・紀永-
美紀の養父となった、倉原貢とは、かなり若い頃に知り合った。
まだ、早乙女と言っても下っ端で、システム関連の子会社でプログラマーをしていた時期‥
当時は、会長になろうとは夢にも思わず‥
好きな画家を目指しながらも、早乙女と言うだけで、あの会社に強制的に入社させられた。
プログラミングは1人では成り立たない、関連するシステムエンジニアだった、倉原と出会ったのもその頃。
直ぐに意気投合した‥
早乙女の名を気にせずに、話し掛けて来る倉原‥
そんな倉原に、仕事面でもプライベートでも何でも話し合い、時には飲み合い‥
私の腹の内を話せた数少ない1人。
だからこそ、私は倉原に美紀を託した‥
倉原も快く引き受け‥‥
そして私達は話し合い、お互いに一線を引く事に決めた、美紀を守る為に・・・
そんな倉原に、今更会う訳にもいかず、何度か遠藤を差し向けたのみ。
多分、倉原も苦悩はしていたと思う‥
養女だと知れ、心を開かない美紀‥‥
幾ら言い繕おうと、血の繋がらない親子関係には変わらない‥
倉原の事だ静観‥そういう方向だったと推察出来る。
穏やかで聞き上手の倉原だから・・・
「これ以上、倉原の負担になる事は避けたいね」
「しかし、事情が分かるとすれば倉原氏しか‥‥」
「今までも、十二分にやって来てくれたんだ‥
家庭内の事は、倉原夫婦の領分、こちらが首を突っ込み過ぎるのも失礼に当たる‥‥
それに、気付き事すれ、美紀が倉原に何か言うとは思えないよ」
「・・・はい・・・」
これで、遠藤が倉原貢の方を諦めてくれれば良いのだが・・・
