テキストサイズ

禁断背徳の鎖・絡み交錯する運命の赤糸(改訂版)

第5章 その時・紀永-




「なるべく現状維持のまま‥
時間を掛ければ、自ずと原因は分かるだろう」


「宜しいのですか??」


「ああ‥
それで構わない」


こうとしか言えない自分が辛いが、今はこれで全力なのだ。



「・・・会長・・・」


辛そうな悲しそうな顔をする遠藤に、私は作り笑顔を向ける事しか出来ない。


本当は私が直接動きたいのを、嫌なほど理解しているのだから・・



「・・そういえば、アトリエの方はどうなっている??」


この話は終わりと、私は無理やり話題を切り替えてみた。



「セキュリティー対策は万全です、買い手は‥現れませんが‥‥」


「元々趣味の延長だからね、買い手が来るとは思ってはいないよ」


セキュリティーが万全なら、それで良い‥
あのアトリエには秘密がある、空き巣や泥棒は御免被りたい。



「アトリエの方には?」


「・・行くつもりは無い」


美紀との思い出が沢山詰まったアトリエ・・


あの日から、私はアトリエに行く事を止めた‥
幸せに満ちたあの場所は、今の私にはあまりにも辛過ぎる。



「・・・最悪、倉原貢氏に話を聞こうと思っています」


「遠藤・・・」


「数度の訪問で、倉原氏から話は聞いていますが‥
美紀様は倉原夫婦にすら心を開かないので、確定的な事が出るかは未知数です」


折角話を変えたと言うのに‥‥


遠藤の気持ちも分かるが、なるべくなら倉原に余計な話は持ち込みたくは無い。



まさか16才の時に、養女だという事がバレていたとは‥‥


あの頃の、一瞬だけ見せていた、美紀の杞憂‥
それは自分が養女で、倉原夫婦の本当の子じゃ無いと知ったから。



『私は綺麗じゃない』



あの頃の美紀が言った言葉‥‥


全ての事に私が関わっていた事実‥
今更らながら思い知らされる。


そして、倉原にかなりの負担を強いていた事も‥‥


ストーリーメニュー

TOPTOPへ