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赤い鴉

第5章 番外編…初デート

「タケル?気を付けてね?」
「?」
タケルは自分がどれだけ周囲の視線を集めているかまるで気付いてない。良くここまで無自覚でいられるなと迅は苦笑する。
ポップコーンを食べながら映画を見る、タケルと迅もあまり映画とか見るほうではなく詳しくはないが初デートとあってふたりとも少し浮かれてた。
「…ッ…!!!」
タケルの下半身になにかがそっと触れぞわっと背中が粟立つ。タケルは近くの迅の手を握ろうとするが振り払われる。
少しショックを受けるタケル、そんなのお構い無しに男はタケルの中心に触れようとする。
「ねぇ?オジサン?人の恋人になにしてるんですか?」
タケルの身体に触れようとしている手を迅が掴んだ。男は潰れたカエルのような声を出して席をうつした。
「全くこんなところに来てなにしてるんだか…っとタケル?大丈夫か?」
「う、うん」
タケルは迅の手に触れる。今度は強く握り締められる。
「やっぱり怖かった?」
「ち、違う」
「大丈夫、僕が付いている」
「本当に違うんだって」
少しずつ声が大きくなっている迅にタケルは声を落とすように云う。
「実は最初さ?手振り払われたのはショックだったけど…」
タケルは映画館が暗くて本当に良かったと思った、今の俺は絶対顔が赤いはずだから…そう思いながら迅の綺麗な手を握る力を強める。
「助けてもらった時は嬉しかった」
「……ッ…」
迅は映画館が暗いことを恨めしく思った、今のタケルは絶対可愛い顔しているのに…。
「ねぇ、このまま手を繋いで良い?」
「良いよ」
映画が終わるまでふたりは手を繋ぎ続けた。



「た、楽しかったね」
「う、うん」
映画館での出来事のせいで恥ずかしさから顔をあわせられないタケルと迅。
「なあ?」
「なに?タケル?」
電車の中でいつものようにタケルを庇うように壁に手を付く迅。
「…今日も家まで送ってくれるんだろ?」
「もちろん」
「だったらさ、夕飯は俺の家で食べない?良かったら迅が好きなの作るよ」
「うん?タケルって料理できるの?」
「両親も兄も忙しかったからそこそこ」
照れ臭そうに目を伏せるタケルに迅は悶えた。
(今すぐ抱き締めたいッ!!)

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