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赤い鴉

第5章 番外編…初デート

「暑いね」
「あぁ…」
屋上の日影で恋人の迅と昼ご飯を食べるタケル。
「暑いから水分補給怠るなよ」
迅はタケルにお茶を渡す。
「ありがとう」
「どうも」
タケルは迅から受け取ったお茶を飲む、白い喉がわずかに動く。その仕草が妙にエロく迅は言葉を忘れてしまう。
「迅?」
「あ?…いや、なんでもない」
急に黙ってしまった迅をタケルが不安そうに見上げる。
「迅も体調には気を付けてよ」
タケルは飲みかけのペットボトルを迅に向け『飲む?』と訊く。
「う、うん」
正直誘っているようにしか見えない。迅は冷たいお茶を飲んでるのになぜか身体が熱くなったような気がした。
「……そんなに心配しなくても学校ではしないよ、迅の内申に傷が付くの嫌だし」
「………別にそんなこと気にしてない」
自虐とも取れるタケルの発言に迅はため息を吐く。
「タケル?今日の放課後空いてるか?」
「空いてるけど?」
迅はタケルの身体を引き寄せる。
「じゃあデートしない?」
「うん?え?えぇ?」
タケルの頬が赤くなる、こう云う普通の『お付き合い』には抵抗ないみたいだ…迅はタケルの反応に苦笑する。
「叔父さんと映画見に行く予定だったけど、叔父さんが急な予定入ったからタケルと行きたいなって」
耳元で囁かれタケルは身体を固くする。
「じ、迅のほうこそ俺を誘ってるだろう!!」
「気のせいだよ」




「じゃあ行こうか?」
「う、うん」
放課後…迅はいつも通りタケルを迎えに来る。初めてのデートで緊張しているのかタケルの表情が少し硬い。
「表情が硬いぞ」
「ひゃ、ひゃめて」
迅はタケルの頬を優しく摘まんだ。
「だ、誰か見てたらどうするんだ」
「僕とタケルしか教室にいないよ」
すでに教室は閑散としていた。タケルは急いで帰り仕度を済ませる。
「タケルは映画館初めて?」
「兄さん、忙しいからあまり出掛けないんだ」
「そうか」
タケルと迅は駅前近くの映画館を目指す。芸能人も裸足で逃げ出すタケルの美貌に男女問わず視線を集める。

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