
原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
下半身に集まってくる血を散らすように、俺もぐいっとグラスを煽ぐ。
それを見ていた周りの先生たちが"お、いいねぇ~"と囃し立てて。
あっちのテーブルでは流行りのギャグなんかで盛り上がってて、そっちのテーブルでは説教が始まってる。
初めてこういう大人の飲み会に参加したけど…こうもみんな人が変わるもんなんだなって。
日々の仕事から解放されていい意味でリラックスしてるんだろうけど。
こんなもんなんだろうな、大人の世界って…
「…ねぇ相葉せんせぇ?」
ふいにすぐ近くで俺を呼ぶ声がして。
その声の主はもちろんにのちゃんなんだけど。
…って、ちょっと寄っかかっちゃダメだってば!
完全に俺の肩に全体重を預けて見上げてくる揺れる瞳。
そのどこか熱を帯びたような色に見つめられて心臓が一気に早鐘を打つ。
「さっきね?先生たちと手の大きさ比べしてたんですよぉ」
「…あの、せんせ、」
「だからしよ?相葉せんせぇ…」
ふにゃっと笑いながら"はい"って小さい手を差し出してくるにのちゃん。
…つーかその前に"しよ?"なんて爆弾フレーズ簡単に落としてくれてどういうつもり?
ぴったり密着して重みのかかった左半分。
その部分からにのちゃんの火照りが伝わってきて益々ジンジンする下半身。
ヤバい…
今立ち上がったら確実にヤバい…
「はい、早く…手ぇ出してください」
まったりとした口調で催促されテーブルに置いていた左手を捕らわれた。
ぺたんと合わさった手と手。
それは比べなくとも一目瞭然のレベル。
もう周りの先生たちはそれぞれ隣同士で話したりしてて、端っこに居る俺たちの手比べなんて誰も興味を示してない。
いやそもそも手比べなんてどうでもいいことお酒入ってなきゃやんない。
誰も見ていない、多分きっと。
「…にのちゃ、」
「ふふっ…やっぱ相葉せんせぇのおっきいね…」
「っ…」
だからここは恋人として声をかけてあげなきゃ、と思った矢先。
そんなトドメみたいなセリフ上目遣いで言われたら。
…マジでどうしてくれんのにのちゃん。
そっと目線を落とすと中心に緩く山を作るジーンズ。
ほんと勘弁してよっ…!
