テキストサイズ

KIND KILLAR

第9章 Love me gently?


「……しくん!!さとしくん!!朝だよ!起きて!!」



耳に心地よい低音が、そう囁くから。



O「……ん。」



ゆっくり目を開くと。



S「おはよ。」



昨日の今日だと言うのに、優しく微笑んでくれる翔くんがいて。



O「おはよ……ありがとう。」



そう言って、腕を伸ばして彼に絡まりついた。



むぎゅぅーっ、と翔くんに抱きつくと、世界が砂糖菓子のように甘くきらめいて。



オレの心の荒んだ所も、乾いた部分も。



全部を満たしていくような気がする。



ああ、恋って、こんなだった。



昔を思い出して、ちょっと辛くなるけど。



S「さとし、くん?」



O「んーん。なんでもない。」



彼の声を聞いて、彼と触れ合っていれば、何も怖いものはないと確信できた。



その瞬間、8時を知らせるアラームが鳴ったから。



O「やば、まつずんに怒られる!!」



ぱっ、と翔くんから離れた。



だから、なんてのは言い訳だけど。



オレは、その時の翔くんの表情を見てなかった。



その時、彼がどんな思いでオレを起こして。



どんな思いで、腕の中におさまって。



どんな思いで、オレを見つめてたかに。



気づかなかったんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ