テキストサイズ

今日も明日も 2nd season

第9章 見えない鎖 part ⅩⅠ


自分でも驚くくらい、それは早かった

お兄さんも翻す余裕はなく、いとも簡単にドアの外に弾き出され、外廊下の柵に背中を打ち付けていた

「…っ」

痛みに歪むお兄さんの顔を見て、一瞬罪悪感には駆られたけど

それよりも


ドアを勢い良く閉めて、チェーンを掛けると

今までになく蒼白なかずくんを抱え上げ、中に急いで運んで行った


「かずくん、もう大丈夫」

ドアの外にいるのは分かっている

だけどすぐに開けられる筈がないから、暫くは安心出来る


たったそれだけの “大丈夫“

はっきり言って何ひとつ大丈夫なんかじゃない

それでもかずくんには、そう伝えて抱き締める事しか出来なくて



かずくんを抱き締めたまま、スマホに手を伸ばす

掛ける相手は勿論、先輩


『無事か!?』
コールが鳴るかどうかの素早さで、それは繋がった

「なんとか…追い出せました」

『ああ、見てたからそれは知ってる。…弟くんは?』

そうか
先輩、近くにいたんだよね

「かずくんは……」

抱き締めても震えは治まらず、顔色も悪いままで

視線もどこを見てるのか分からないくらいに放心していた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ