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今日も明日も 2nd season

第9章 見えない鎖 part ⅩⅠ


俺を見上げるその目は不安に満ちていて

…かずくんの心境を考えると、それも当たり前なんだけど


「かずくん、どうしたの?」
視線を合わせて、髪を撫でる

「ここ……お兄ちゃん、来ない?」

「え?」

「俺…お兄ちゃんには逆らえないです」

…さっきの事を言ってるんだとすぐに理解できた

“おいで“ と言われたら、行くしかない
行かなきゃいけない

そう、教え込まされてきた


「大丈夫。ここには来ないよ」
“暫くの間は“

その言葉は、敢えて飲み込んだ

わざわざ怖がらせる必要はないし、もしかしたら来ないかもしれない

……望みは薄いけど




「相葉、とりあえず俺達は帰るよ。弟くんも落ち着かないだろうし」

“まずは休め“

「明日、仕事終わったら来るからな。食べるもんはそこに入ってる」

いつの間にか置いてあった大きな2つのレジ袋に、もう何も返せない

こんなに親身にしてくれる人、初めてだ


「先輩、俺……」

「話は明日。しっかり休めよ」

俺の話を遮って

先輩と大野さんはすぐに部屋を出て行ってしまった








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