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風鈴の夏

第3章 俺と僕

「どうかしたのか?」

分かっていたが俺は一応、少年に聞いた。

「ボク、おとーさんとおかーさんとお祭りに来てた…。でも、おとーさんもおかーさんもどっか行っちゃった。」

「…迷子か。」
 
「迷子じゃないもん!」

は?
俺はキョトンとした。
今ならこの時、俺は迷子になっていたのは分かるが幼い俺は自分が迷子なのが分かっていないのかもしれない。もしかしたら分かっていたが認めなくないだけか。

「名前は?」

俺は分かっていたが聞く。
俺は未来から来た君だなんて言ったところで彼が信じるという保障は無いし、不審がられても困る。

「ゆーと。みつはしゆーと。」

やはりな。

「俺もね、夕人っていうんだ。でも分からなくなるかも知れないから君のことユウくんって呼ばしてもらっても良い?」

「う、うん。」

俺はユウくんと一緒に両親を探すことにした。 
少なくともあの時、今の俺みたいに心配して声をかけてくれた人がいたら…
…いたら

俺は夏祭りがトラウマにならなかっただろうに。

「お兄ちゃん?」

「えっ?あ、な、何?」
 
考え事をしていてボーッとしていたらしい。

「お兄ちゃんは1人でお祭りに来たの?」

「まあね。」

「デートじゃないんだ?」

「相手が居ないしね。」 

俺は苦笑した。
全く遠慮が無い。
別に自分なのだから恥ずかしがる必要は無いのだが、そうは言ってもなぁ。

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