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風鈴の夏

第3章 俺と僕

その時

「「夕人!」」

若い夫婦が走ってきた。
間違いない、15年前の俺の両親だ。

「おとーさん!おかーさん!」

ユウくんは走って両親の腕の中に飛び込む。

「息子を見ていただいたんですね?ありがとうございます。」 

母さんが言う。

「あっ!いや、大したことじゃありませんから。」

「いや、あなたにも予定があったでしょう?」

今度は父さんが言う。
俺は首を横に振る。

「いいえ。ただ暇潰しに来ただけですから、気にしないで下さい。」

俺は屈み込み、ユウくんに言う。

「良かった。お父さんたちが見付かって。」

ユウくんは嬉しそうに言う。

「お兄ちゃんのおかげだよ。」

「俺は何もしてないよ。」

俺は笑うとじゃあと言って去ろうとした。

「お兄ちゃん!ボク、大人になったらお兄ちゃんみたいに強くて格好良い男の人になる!」

俺は手を挙げて答える。
俺みたいに強くて格好良い男の人か…。
ユウくん、俺は君が大人になった人なんだよ。
俺は心の中でユウくんに語りかける。
俺は君が思うような格好良い男の人になれたのかな?

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