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夢鉄道

第1章 夢鉄道

 深夜1時。

 私は、都内にあるワンルームマンションの一室に、仕事から帰ってすぐ、投げつけられたペンギンのように、ベッドの上に飛び乗った。

『ボフッ』という音とともに、体は跳ねあがり、ほこりとダニの死骸が宙に舞う。

 申し遅れました。私の名前は「夢風鈴(ゆめかぜりん)」。

 と、言っても、これは芸名。本名は「岩田ふね」。

 なぜ、芸名使ってるかって?

 実は私、アイドルやってるの。

「南無般若108(なむはんにゃワンオーエイト)」ってアイドルグループで、センターの天女美伽(あまねみか)って娘の四人斜め後ろで踊ってます。

 歳は……28歳になったばかりの、設定17歳のJKアイドル。

 バレたら即クビ、行く末はAVかな?

 つまり、私はいま、アイドルの仕事やってから帰ってきたばかりなの。ホント、マジ疲れる。

 はぁ、これからシャワー浴びんのめんどくさ。

 誰も近寄って匂い嗅いでこないから、少々汚れてても大丈夫。握手会だって、コロンつけてればごまかしがきくし。

 南無般若108なんて、まだCDデビューしてないし、収容人数三十人の劇場で、いまだに半数以上席が空いてる。


 

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