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夢鉄道

第1章 夢鉄道

 つまり、堂々と素顔さらけ出して繁華街歩いても、誰一人として声がかからない。変な勧誘はあったりするけど、それ以外は本当に無。

 実年齢から考えると、もうアイドルとしては遅咲きかもしれないけど、一度だけでいい。表舞台で餌を待つ狂った豚ども……失礼、私達を待ってくださる大切なファンの皆様の前で、精一杯パフォーマンスをしてみたい。

 六帖しかない、狭い部屋から、いい物件に移りたい。

 そんな想像をしながら、いつ食べたかわからない弁当のパックと、ティッシュやペットボトルが散乱する床に靴下を投げ、私はいつしか眠りについた。

……やがて、私は漆黒の闇の中を、ただただ、目的もなく歩いていた。

 なにも思うこともなく、まっすぐに歩を進めている。

 そして、私はなにかに気付いた。


「ここどこ?」


 いまさらか!

 そう、光さえ見えない黒一色の世界を、なぜか中学生の頃の、紺色に赤い線が入った体操服を着てさ迷っていた。

 ジワジワとくる不安と恐怖。


「まもなく、右から参ります電車は各駅停車の天女(あまね)行きです」

 誰っ!?

 急に出た謎の声に、私は立ち止まり、辺りを見渡す。

 しかし、なにも見えなかった。

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