テキストサイズ

夢鉄道

第1章 夢鉄道

「さあ、もうすぐ列車がやってきます」

 列車!? なんの列車?

 バクーは、真っ白な空間に指を差した。

「あちらから、夢を走る列車が到着いたします」

 すると、一瞬のうちに、辺り一面に駅のホームが描き出された。どこの駅だろうか? なんとなく、地方の集落で見かける単線の、無人駅のようだ。

 だけど、こんな不思議な光景を前にして、なぜか私は平然と落ち着いていられた。

 私の心が聞こえたのか、バクーが周りを見渡しながら言った。

「夢の中で、いきなり場面が変わってもなんとも思わないでしょ? それと同じです」

 納得した。

 やがて、遠くから、1つの強い光が現れた。

「来ました。あれが、夢を走る列車、ひかり号です」

 偶然か、旧式の新幹線を思い出した。

「列車もイメージした姿でやってきます」

 まんまの形でやってきた。夢の中だから、もっとドリーミーなものがくるかと思ったら、完全昭和型を夢にまで見てしまった。

 新幹線が、私とバクーの目の前で、停車した。

「さあ、乗りましょう」

 扉が開き、中に入ると、バクーはやたらと語りはじめた。

「中は、イメージとは関係なくこのままです。お好きな席で、おくつろぎください。なお、この車両は二両編成で、自動運転により動いております。あと、注意点だけもうしておきます。あなたはこれから、ある人の夢の中に旅をすることができます。さて、旅をしてみたいと思いますか?」

 夢の中? 人の夢に入れるの?

 それは楽しそう。

 もちろん、行きたいと告げた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ