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夢鉄道

第1章 夢鉄道

「では、あなたに注意点を890ほどお伝えしておきましょう」

「いや、多いよ。全部聞くだけで夢から覚めるわ。バクーだから890あるんでしょ」

「では、1つ目」

「話をスルーかよ」

 さんざん、駄々をこねた末、注意点を3つに減らしてくれた。それだけになると、残り887が気になるけど……。

「まず1つ、相手の夢にいようが、ここにいようが、目が覚めた時点で、旅は終わります。2つ目、相手の夢に滞在出来るのは、5分間だけです。時間がたてば、列車は動き出します。3つ目……これが肝心です。自分が相手の夢にいる間、高い場所から飛んだり、穴に落ちたり、つまずかせたりを相手にさせない」

「どういうこと? 夢の中だから、死んだりはしないでしょ?」

「ま、つまり、あなたが人の夢の中にいる間に、相手が起きて夢から覚めてしまうと、あなたの意識は閉じ込められ、目を覚ますことができません。つまり、あなたの体は生きたまま、眠り続けるってこと」

 落ちたり、つまずいたりすると、ビクッとなって、目が覚めることがある。それは、避けろと言うことだ。

「待って、もし、列車に乗り遅れたらどうなるの?」

「あなたが目覚めれば戻れます」

「移動手段だけね」

 私は、ゆっくりと列車の旅を楽しもうと、ゆったりとした椅子に座った。


 すると車内アナウンスが……


『次は~、あ、天女ぇ、あ、天女ぇ』

 中川家礼二かと思った。


「あ、間もなく到着です」

 早くね?


 もう到着したようだ。

 て、ことは、もう寝てるってこと?

 天女、結構早く寝るんだ……。


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