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夢鉄道

第1章 夢鉄道

「えっ!? なに?」

「あらら、あの子、目が覚めたようですね」

「えっ! でも、まさか……」

「あの子……おねしょしたみたい」

「っ!」

 お花摘みって……アウトドア用語で、お手洗いに行くって意味だった。あの子、わりとアウトドア好きだから、そんな言葉知ってたんだ……。もっと早く気が付いていれば……。

「バクー、私どうなるの?」

「私とは、もうお別れです」

「え……」

「あなたは、もう、夢から覚めることはありません。肉体は、ずっと眠りについているのです」

 うそ……うそだよね……。え、なんで天女、こんな時にかぎって寝小便たれるのよっ!!

「え、もう、戻れないの!? 戻る方法はないの!?」

 絶対、なにかある。なにか、方法があってほしい。

 だが、バクーが言ったのは……

「あの子が同じ夢を見れば、元に戻れます」

 絶対ないわっ!!

「では、夢風……いや、岩田ふねさん、ごきげんよう」

 バクーは手を振りながら、消えていった。

「え、バクー……待って、待って、置いてかないで、助けて、助けて……助けてぇーーっ!! 戻ってきてぇーーっ!!」

 私は追いかけた。でも、バクーは漆黒の空間の中に溶け込んで姿を消した。

 
 私は、光もない夢でもない無の世界を、迷子のようにさ迷い続けた。

 顔は誰にも見せられないほどクシャクシャになり、飲み物も食べ物もなく、また死ぬこともできず、恐怖を通り越して、気が狂いながら歩き続けた。

 言葉も、すでに人の言葉を発していなかった。ただ、囁くように……「ちり~ん……ちり~ん」と……。プロデューサーがアイドルらしい名前とつけてくれた夢風鈴(ゆめかぜりん)。岩田ふねじゃ、人気ないよね。

 私は風鈴、夢の中でさ迷う風鈴。

 誰か……あなたの夢に、出ていいですか?




「おい、諦めるな」

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