
風鈴が鳴る時
第1章 い
風鈴と聞いて、男はガラス製の丸い形のものを想像していた。しかしそこには金属製の釣り鐘のような形のものが鎮座していた。弥生時代の銅鐸のミニチュアのようだ。
「これは?」
「青銅製の風鈴でございます」
「青銅…。これ…鳴るのか?」
少々さび付いているようにも見えたそれが、風鈴らしい涼やかな音をたてるようには見えなかった。
「ただつるしているだけでは鳴りません。でも、1つ持ち主の望みをかなえる度に1つ鳴る、と言われております」
「…言われている?」
「まだ誰も鳴っているところを聞いたことがございません」
「ふむ。面白そうだ、買おう。いくらだい?」
「いつもありがとうございます、今回はお代は結構でございます。その代わり、旦那の大切にしていたものを何か一つ物々交換とさせてください」
「はぁ?大切なもの?!」
「現在大切にしているもの、ではなく、今まで大切にしていたものでございます」
「うーん。じゃあ、これでどうだ?」
男は腕にはめていた時計を外し、店主に差し出した。店主はそれを手にとって品定めする。
「最近、デザインに飽きてきてな。買い替える予定でいたんだ。一応今までは大切にしてきたものだ」
「いつもありがとうございます」
どうやら、取引は成立したらしい。
「あぁ、そうそう。ひとつだけ注意点がございまして…」
店主は、そう言いながら男から受け取った時計をポケットに入れ、桐箱の蓋をそっと閉じた。
「あまりむやみに願い事をしてはいけません」
「これは?」
「青銅製の風鈴でございます」
「青銅…。これ…鳴るのか?」
少々さび付いているようにも見えたそれが、風鈴らしい涼やかな音をたてるようには見えなかった。
「ただつるしているだけでは鳴りません。でも、1つ持ち主の望みをかなえる度に1つ鳴る、と言われております」
「…言われている?」
「まだ誰も鳴っているところを聞いたことがございません」
「ふむ。面白そうだ、買おう。いくらだい?」
「いつもありがとうございます、今回はお代は結構でございます。その代わり、旦那の大切にしていたものを何か一つ物々交換とさせてください」
「はぁ?大切なもの?!」
「現在大切にしているもの、ではなく、今まで大切にしていたものでございます」
「うーん。じゃあ、これでどうだ?」
男は腕にはめていた時計を外し、店主に差し出した。店主はそれを手にとって品定めする。
「最近、デザインに飽きてきてな。買い替える予定でいたんだ。一応今までは大切にしてきたものだ」
「いつもありがとうございます」
どうやら、取引は成立したらしい。
「あぁ、そうそう。ひとつだけ注意点がございまして…」
店主は、そう言いながら男から受け取った時計をポケットに入れ、桐箱の蓋をそっと閉じた。
「あまりむやみに願い事をしてはいけません」
