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風鈴が鳴る時

第2章 ろ

……望みを叶える風鈴なのに、むやみに願い事をするな、だと?
しかも、自分から願い事をしなくても、それが本当の望みであれば自然に叶う、とか言っていたな。そんで、自然に叶うものにはリスクは伴わないが、無理やり願い事をかなえさせる時には大きな代償が発生するって?代償ってなんだ?
相変わらず、変なことばかり言うじーさんだぜ。ま、あれで結構面白いからいいけどな。

はぁー、風鈴さんよぉ。俺は別に多少の代償を払うのは構わねえよ。俺の会社をおおきくしてくれ!
儲かると思って何でも屋を開業してみたが、ちっとも客足は伸びねぇし、前は気前よく金出してくれてたオヤジの会社も、兄貴の代に代わってからあんまり貸してくれねぇし。

風鈴の入った木箱を片手に店から出てきた男は、ぶつぶつと愚痴とも願い事ともとれる内容のことをぼやきながら街を歩いて行った。

そのまま、小さな雑居ビルの中へと入っていく。

「あっ、社長!大変です、小山商事から緊急のお電話です!なんでも小山社長が倒れられた、とかなんとか…」
「兄貴が?」

男は受話器をひったくって耳に当てた。しばらく無言で状況を聞いていたが最後に、「わかった」とだけ返事をして電話を切った。

「大丈夫なんですか?」

部下らしき男がおそるおそる訪ねてくる。神経質そうで覇気のないノッポメガネだ。

「いや…ちょっと出かけてくる。後のことは頼むぞ」



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