愛するあなたよ、この手を離さないで
第1章 この手を離さないで
また『0』だ。
今日もカウントされていない。
早く『1』になって、ここを脱出したい。
ゼロ、それはマイナスでもプラスでもない何の価値も定められていない。
つまり現在の私の価値はそんなもの。
私は太陽が当たらない真っ暗な世界に住んでいた。
鉄柵に閉じ込められ、両手には手錠、足には足枷を付けられている。
不味い飯を食べさせられ、狭い檻の中で眠って1日が終わる自由のない世界。
コツコツと足音を鳴らして、恐怖はやってくる。
キイッ――
向こうの檻の扉が開けられた。
「時間だ」
「嫌だっ!いやああ!!」
対面していた檻にいた女が、妙な制服を着た男に引っ張られて行った。
今日も同じ世界に閉じ込められたやつがひとりいなくなる。
予め付けられている手錠を鎖で繋がれて、何処かへ連れていかれる。
泣き喚いて連れていかれた人は二度とここへ戻ってくることは無い。