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笑い、滴り、装い、眠る。

第7章 雨の日は家にいて



訪れた静寂の中で、僕は微睡みながら、ピッタリと僕に体を預けすうすう寝息を立てている翔くんの顔をずっと見ていた。



ふふっ。寝顔、可愛い。



もう一つの、翔くんのトレードマークとも言える、ぷっくりした赤い唇を指で突っついた。



翔「う……ん。」



擽ったそうに身動ぎしながら翔くんは、僕の肩口に顔を押し付けてきた。



あまりの愛らしさに頬が緩む。



でも、ふと脳裏を掠める「カズくん」の影。



この、愛くるしい寝顔を見てるのは、



僕だけじゃない……。



それでも、切なげに僕を求めたあの時の君の言葉や表情は、間違いなく僕だけのものだった。



「好きだよ、翔くん…」



これ以上求めちゃいけない。



翔くんの腕の中から静かに抜け出そうと身動ぎするけど、



あの、体を重ねあった甘い時間をなかったことに出来なくて僕は、



動くことができなかった。


…違う。



無かったことにしたくないんだ。僕が。



離れたくないんだ。



だから…だから今だけでいい。



ううん。夜が空けるまでの間、



もし、許されることならば、目覚めた君が僕におはようと言って笑いかけてくれるまで、



傍にいたい…。



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