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笑い、滴り、装い、眠る。

第7章 雨の日は家にいて



結局、僕は簡単なメモだけを残して翔くんの部屋をあとにした。



『起こしてくれたらよかったのに…』



と、寄越されたメッセージにつけられたいくつものマークに頬が緩む。



でもその後には『また、会える?』と続く。



もちろん、会いたいけど、



会ってもいいの…かな?



簡単に結論が出せる訳もなく、携帯をテーブルに置き作業を続けた。



どれくらいの時間が経っていたのか、



ふと顔を上げ、辺りが薄暗くなっていることでようやく時間の流れを感じる。



ちょっと休憩しよう。



灯りをつけキッチンに向かう途中、窓の外を横切る人影に気付く。



もしかして、と思いマグカップを置き玄関に向かう。



翔「あの……俺…櫻井だけど…入ってもいい?」


「し…翔くん?」



どうしよう?



ドアノブを握りしめる手に汗が滲む。



カズくんに悪いという気持ちがあるなら当然開けるべきじゃないし。



もし、そうじゃないなら…


翔「大野さん?」



自分の気持ちに正直になるんだったら…



翔「いるんでしょ?」



翔くんが何度かガチャガチャとドアノブを回した後



僕は結局、ドアの鍵を開けた。



翔「なんだ…いるんじゃん?」



僕を見て安心したように笑った翔くんは、



覆い被さるようにして僕を抱きしめてきた。



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