笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
「そっか…忘れてた。」
と言うよりは、思い出したくなかった。
カズくんの、バースデープレゼントを僕に頼んだばっかりに二人は別れてしまった。
この先、誕生日、って口にするたびに、こんな苦々しい思いをするのかと思ったら、
重いため息が漏れた。
翔「一緒に祝ってあげられなくて残念だったけど…」
「いいよ、そんなの。」
翔「その代わり、と言っちゃなんだけど…」
徐にポケットに手を入れ、
その手の中に納めたものを僕の手の中に握らせた。
「え……これ…」
翔「そう。大野さんが俺のために作ってくれたヤツだよ?」
「それは分かるけど…」
翔「『サトシ』と『ショウ』でイニシャルが同じ『S』でしょ?だから持ってて?」
もう一つの、『K』の方は、って聞こうとしたら、
そのもう一つをポケットから取り出した。
翔「…突き返された。」
「…そう。」
翔「返す方が失礼かも、って思ったけど、って。」
「だったら、僕が預かるよ?」
翔「え?でも…」
「僕が作ったんだし。」
じゃあ、と、翔くんはその片割れを僕の手の中に落とした。
「ねぇ…翔くん。」
翔「ん?」
「しばらく…会うの…止めない?」
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