笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
あれから…
僕は相変わらず作業場に籠ってオーダーされたシルバーのペアリングの仕上げに取りかかっていた。
仕上げ、と、言ってもあとはイニシャルをいれるだけだったけど。
「出来たぁ!!」
僕はペアリングをケースに納め、そっと紙袋に入れた。
ちょうど折よく翔くんからもうすぐ着きますとの連絡が来た。
何気に窓の外に目をやると、窓ガラスに小さな雨粒が付いていた。
ふふっ。翔くんて、ホント雨男。
そして雨が本降りになる頃に、冷てぇ冷てぇ、とか言いながら工房のドアを叩いた。
「傘、差してきたらいいじゃない?」
翔「えー?いーじゃん、別に?」
僕の手からタオルを奪い取り雫を拭った。
翔「あれ?そんなことより荷物は?」
僕たちはこのあと、翔くんの誕生祝いを兼ねた一泊二日の温泉旅行に行く約束をしていた。
「持ってきてるよ?」
と、部屋の隅っこに置かれた小さなリュックと紙袋を指差した。
翔「いや…あの…あれ…」
「え?一泊二日でしょ?荷物そんなに要らないじゃない?」
翔「いやっ…そうだけど…少なすぎない?」
「せっかくウエストポーチに入れようと思ってたのに、翔くんがダメとか言うから…」
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