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笑い、滴り、装い、眠る。

第8章 花梨―唯一の恋―



十年以上前?



会っているのがそんな昔の話なら、大人ならいざ知らず、子どもなら姿形が大きく変わっているから、



仮に何処かで会ってたとしても互いに気づきにくいだろう。



でも、コイツは俺のことをちゃんと覚えてた。



翔「あの……俺の顔に何か…」


「あっ!!ごめん。」



つい見ちまった……。



この弟も、兄貴に負けず劣らずのなかなかのイケメンだ。



ま、兄貴の顔が少し濃ゆいぐらいだから、このぐらいの童顔が落ち着くな?



「あの…俺から絵を教えてもらいたい、って……。」


翔「あっ、はい。」


「まず、どれくらい出来るのか見たいんだけど?」



と、与えたお題は『犬』。



が………。



「………。」


翔「……すいません。」


……なかなかだな?(汗)



足らしきものが四つあるから辛うじて、何かしらの生き物だ、って解るけど…。



翔「あの……」


「えっと…一コ聞いていい?」


翔「は、はい。」


「何で俺から絵を習いたい、って思ったの?」


翔「ホントに覚えてないんですか?」


「何を?」



徐に翔は机の引き出しの中から小さな箱を取り出した。



そして、その中から小さく折り畳んだ紙を広げて俺に見せてくれた。



翔「これ……今でも俺のお守りなんです。」



そこに描かれてあったものは、



正義の味方が悪人をやっつける、という、ありふれた内容の四コマ漫画だった。


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