テキストサイズ

笑い、滴り、装い、眠る。

第8章 花梨―唯一の恋―



翔「あの頃は体がスゴく小さくてよくからかわれてて。で、落ち込んでいる俺をあなたが慰めてくれたんです。」


「へー…。じゃあ…絵を習いたい、ってのは……」


翔「俺、絵心全然ないから少しでもまともな絵が描けたらいいなあ……って……。」


「ふーん、ま、いいけど?」


翔「ごめんなさい。」



翔は恐縮して、俺より少し大きな体をすぼめた。



「お前、今日時間あるか?」


翔「少しぐらいなら…」


「行くぞ?」


翔「行く、って、どこへ?」


「いいから!!『先生』の言う通りにしろ。早くスケッチブック持ってこい!!モタモタすんな!!」


翔「は、はい!」



翔は、コート羽織る俺を見て、慌てて自分もコートを着込んだ。



やって来たのは人影疎らな公園。



散歩する人はおろか、ジョギングする人もいない。



それでも俺は、せっかく外に出たんだからと被写体になるものを必死で探した。



……いた。



「ニャア。」



すると、ベンチの、陽射しが当たっている箇所に、一匹のデブ猫が微睡んでいた。



アイツなら、ちょっとやそっとじゃ動かなさそうだから、被写体にうってつけだ。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ