テキストサイズ

笑い、滴り、装い、眠る。

第8章 花梨―唯一の恋―



准「ま、何はともあれ、仲がよくて何よりだ。」



じゃあな?と、准一は片手を上げ立ち去った。



翔「……兄貴と何話してたの?」


「別に。ただの世間話だよ。」


翔「……ホントに?」



泣きそうな声で、泣きそうな顔でぎゅうぎゅうと俺を締め上げる。



「しょ…く、苦しい。」


翔「兄貴と一緒にいるところを見ただけで、俺、息が出来なくなる。」


「だから……っ…」



だから俺の方が苦しいんだって!?



「しょ……たっ…頼む…息が…っ…」


翔「あっ!!ごっ、ゴメン!!」



解放され咳き込む俺の背中を擦ってくれた。



「すげえ力あるんだな?」


翔「ごめんなさい……」



まだ肩で息をしている俺の目の前で翔は肩を竦め俯いた。



「翔。」


翔「は、はい。」


「今日……家来るか?」


翔「え?でもこの間行ったばっか…」


「途中、コンビニ寄って必要なもん買ってさ?」


翔「必要なもの?」


「今日は泊まっていけ。」


翔「え?…それ、って…つまりその…」


「そうだよ?多分、それだよ?」


翔「え…でも俺、まだ二十歳の誕生日来てな…」


「……お前やっぱアホだろ?マジでハタチになるまで我慢するつもりだったのかよ?」


翔「……自分から言ったんじゃん?俺がハタチになるまでダメだ、って?」


「そうだけどさ?」












……俺の方が我慢出来なくなったんだよ。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ