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ドラクエらんど【番外編】

第1章 1

シュンの声は風にも聴こえたようで、僕たちはそれだけで安心できた。



「怖くないよ、シュンがいるなら…」



風の表情に笑顔が戻る。
やっぱり風はシュンのことが好きだったんだ。
僕にはそんな顔はさせられなかった。



ダンジョンに入ると、すぐに鈴と合流することができた。やっぱり鈴も不安だったようで、目に涙を浮かべていた。



3人…いや、4人だ。
大丈夫、シュンが見守ってくれている。
鈴には聴こえないみたいだけど、そのことを話すと空間に向かって手を振りだした。



「シュンってイケメンなん? あたしのこと、見えますか~?」



クスッとシュンが笑ったような気がした。



「マナト! モンスターだよ!」

「鈴は後方から援護、風は回復を頼む!」



僕たちはなんとかモンスターを倒した。
レベル15では少しきついが、無理をしなければ大丈夫だろう。
でも調子に乗ってはいけない、なるべくモンスターに見つからずに脇田を探さなくては。
僕は聖水を振り撒いた。
辺りからモンスターの気配が消えた。



一階から二階に降りる。
僕らより先に入ったパーティーの人たちの姿はなかった。
たまに置いてある宝箱の中身が空っぽなのは、彼らが取ったのか、脇田が取ったのか…。



「ねぇ、風とマナトは付き合ってるの?」

「えっ…な、なにをいきなり…ゲホゲホッ」



突拍子もない鈴からの質問に、僕は唾で喉を詰まらせ咳き込んだ。



「違うよ、あたしとマナトとシュンは幼稚園の頃からの幼馴染みなの」



あっさり否定されて、僕は悲しくなった。



「ふぅ~ん」



鈴が僕を見てニヤニヤしてる。
やめろよ、人をからかうのは。
それに…シュンが気になるだろ。



シュンは風のこと、好きだったんだと思う。
だから僕は身を引いた。



僕では無理なんだ。
勉強もスポーツもなにひとつうまくできない。
得意なことと言ったらゲームくらいで、ゲームならなんでもうまくできた。
ドラクエだって、徹夜して二日でクリアした。
そんなの、なんの自慢にもならない。
ゲームの中でレベルをあげたって、リアルの僕はレベル1のままなんだから…。



シュンには敵わない。
死んでもこうやって、風を笑顔にさせてしまうんだから。だから…僕が死ねば良かったんだ。



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