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ドラクエらんど【番外編】

第1章 1

「マナト、助けて!」



風の叫びでハッとして、僕は周りを見渡した。
気づけば風も鈴も目の前から居なくなっていて、辺りは霧が広がっていた。



「しまった、マヌーサか…!」



幻術攻撃だから、下手に動くと二人まで傷つけてしまう。
その時、霧の中にぼうっと影が浮かんだ。
目が光ってる…モンスターか?
僕はそれに向かって剣で斬りつけた。



「痛いっ! やめて、マナト!」

「!」



風の悲痛な叫び声が聞こえる。
影の正体は風だったのか…わからない。
でも風と鈴の気配の他に、3体モンスターの気配がする。



「落ち着け、マナト…
見極めろ、敵の姿を!」



僕は自分に強く言い聞かせた。
大丈夫、シュンだって居てくれる。
シュンが風と鈴を───。



『助けられるわけがないだろ』

「えっ…」



シュンが僕の目の前に現れた。



『しっかりしろよ、マナト』

「…シュン?」



シュンは僕を悲しい瞳で見つめていた。



『おれはもう死んだんだ。この先風を守るのは、お前しかいないんだよ』

「…」



シュンの言葉で現実を叩きつけられる。
僕は信じたくなくて頭を左右に振った。



「死んだって、ゲームの中での出来事だろ!? これは夢なんだ、だから目を覚ませばまたいつものように三人で…!」

『マナト、頼む』



シュンの姿が消えていく。



「嘘だろっ…こんなの現実じゃない!! 風は…風はお前がいないと、ダメなんだよ…!!」



僕は膝から崩れ落ちた。
全身の力が抜けて、剣を握る気力もなくなった。
風と鈴の声が聞こえたような気がしたけど、僕の耳には届かなかった。



どうしてこうなってしまったんだろう。
こんなことがしたくて、アプリをダウンロードしたわけじゃない。
ただ三人でずっと、楽しみたかった。
風とシュンの笑顔をずっと見たかったんだ。
そこが僕の、唯一の居場所だったから…。



「なにをさっきからゴチャゴチャ言うとんねん! しっかりせえや、マナト!」



突然グイッと襟を掴まれて、左頬を叩かれた。



「……脇田?」

「あほか、なんで来たんや!!」

「…え…」

「こないな危ないとこ、わい一人で十分やったんに!」

「…はっ…」



予想通りピンピンしている脇田の姿を見て、なんだか笑いが込み上げてきた。



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