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ドラクエらんど【番外編】

第1章 1

その時、右腕に温かさを感じた。



「大丈夫だよ、マナト」



風だった。
風が僕の右腕に手を添えて、魔法をかけていた。



「私も戦うから」



風は微笑むと、短剣を懐から取り出した。



「だ…だめだ、風は危ないからみんなのフォローに」

「ごめんね」

「え?」

「もう、魔力も薬草もないの。だからあとは戦うしかないの」

「!」



僕は周りを見渡した。
みんなヨロヨロになりながらも戦っている。
脇田も、鈴も…みんな必死に。
そして力の弱い風までも。
風は…最後の魔力を僕に使ってくれたんだ。



いつの間にか僕の右腕の震えはおさまっていた。
しかも全身にみなぎるパワーを感じる。



「はよくたばれ、う○こ野郎が!!」



脇田の怒号が聞こえてくる。
どんな状況でも動じない、精神力の強さ。
僕は少しだけ脇田を見直した。



『ヴオオオォォォ!!』



突然、トロルが雄叫びをあげた。
その雄叫びで何人かが腰を抜かした。



「マ、マナト…」



腰が抜けて立てなくなってしまった風を、僕は安全な場所に連れていった。



「風はここにいて」

「マナト…」

「ん?」

「お願い、死なないで…」



風は目に涙を浮かべて震えていた。



もう魔力はない。
自分は助けることができない。
最悪全滅するかもしれない。
あの時と、同じ──。



風の気持ちを汲み取り、僕は風を抱きしめた。



「大丈夫、絶対に死なない。みんなで生きて帰ろう」

「…マナトっ…」



僕は風を強く抱きしめた。
風も僕の背中に腕を回し、ぎゅっと力を込めた。
お互いの体温を感じるために。



「ごらぁ、マナトぉ!! こんな時になにをいちゃついてんのや、戦えや!!」

「!」



僕たちは慌てて離れた。



「脇田くんね、自分はいいから魔力はみんなに使ってくれって言ったの」

「えっ」

「意外と優しい人なのかもしれない」



ダメージを受けながらも人一倍動いて、声を張り上げて…。



「いや、あいつはただのバカだよ」



僕は少し嫉妬した。
負けたくないって思った。



──シュン、見ててくれ。
僕の強さを、力を。



僕は生きる。
生きて帰るんだ、元の世界へ。










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