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赤い糸

第13章 With you


ジャージ姿の京介さんといつもの定食屋さんに寄って帰ってきた私たち。

朝食と彼のお弁当の分のお米を研いで、洗濯物を畳んでいると

「璃子も入ってこいよ。」

京介さんがバスタオルで髪を拭きながらリビングに入ってきた。

「はぃ…」

私はパジャマを持ってそそくさとバスルームに向かう。

昨日よりは…ぎこちなく振る舞えていると思う。

シャワーの温度をいつもより熱めに設定して頭の天辺から浴びると

「ふぅ…」

これから先に待つ戸惑いや不安を拭いされるような気がした。

私はボディーソープをたっぷり含ませたスポンジを体の隅々まで滑らせる。

「見られたことあるんだよね…」

曇った鏡にシャワーを当てて自分の体を映す。

見られただけじゃない。あのマメだらけな大きな手で…冷たい唇で…愛されたと思う。

でも…その記憶がない。

ある意味“処女”だって美紀が言ってた。

そうだね。記憶をなくした私からすれば初めて抱かれるんだ。

すべてを委ねればいいって…溺れてこいって…

魔女たちは私の背中を精一杯押してくれた。

「誘われなかったりして…」

私はもう一度頭から熱い湯を浴びてバスルームをあとにした。

*

「おいで。」

俺はドライヤーを振りながら手招きする。

「今日も…乾かしてくれるんですか?」

「だから、これは俺の仕事なの。」

そう、この部屋で璃子の髪を乾かすのは俺の仕事。

「では…お言葉に甘えて…」

璃子は昨日と同じようにソファーの下にちょこんと正座する。

柔らかな髪を指で梳ぎながら風を当てると昨日よりも早くに緊張が解れていくのがわかった。

「下向いて。」

華奢な首にはクリスマスにプレゼントしたネックレス。

「気持ちよくて寝ちゃいそうです。」

いつの間にか胡座をかいて体を揺らして

「いいのか?寝たら贈呈式が出来ねぇぞ?」

「あっ!まだ眠くありません!」

本当に…可愛いったらありゃしねぇ。

パチリとスイッチを切って

「ヨイショ。」

璃子を俺の足の間の指定席に座らせて

「遅くなったけど…はぃ、誕生日おめでとう。」

「じゃあ、私も!少し早いですけど…はぃ、お誕生日おめでとうございます。」

二人の手が添えられたスエードの生地の少し大きな箱には

「やっぱりこれにして正解でしたね!」

揃いのリングが仲良く寄り添って入っていた。

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