テキストサイズ

赤い糸

第13章 With you


「どの指?」

璃子は右手を差し出すと薬指をチョンチョンと動かした。

女に指輪を贈るのも嵌めるのも初めてのオレ。

その事をクリスマスの日に璃子に伝えたら偉く喜んでくれたっけ。

「おっ、いいねぇ。」

揃いの指輪がほしいと言い出したのはいつも遠慮ばかりしている璃子だった。

『離れていてもこれがあれば頑張れます。』

誕生石が一粒埋め込まれたシンプルなデザインの指輪を眺めながら璃子は力強く言葉を紡いでくれた。

「可愛い。」

控えめな璃子が選んだ璃子らしいデザイン。

「次は京介さんですよ。」

お揃いだけど石は付いていないさらにシンプルな指輪を台座から抜き取ると

「動かないで下さい。」

「ハイハイ…」

仕事の関係で明日からはネックレスに通すつもりだけど

「入りました!」

今日だけは特別に揃いでつけることにした。

「なんか変な感じだな。」

照れ隠しで発した雰囲気も色気もない言葉。

「よく似合ってますよ。」

璃子は角度を変えて眺めてみたり電気に翳したり、指で撫でてみたり…

「もっとデカい石が付いてるのにすればよかったな。」

そんなに嬉しそうな顔するならって思ってしまうけど

「これがよかったんです。」

俺に指輪を向けながら璃子は満面の笑みで答えてくれる。

胸元に輝くネックレスを贈ったときもそうだった。

何度も指で触って確かめて

「ウフフ…」

またその指輪を触るのが癖になるんだろうな。

璃子の華奢な指に手を添えてクルリと指輪を廻してみる。

お互いに大切な日は一緒に過ごせないけど

「よく似合ってる。」

心は繋がってるんだ。

小さくてぷっくらしている唇に吸い寄せられるようにキスをする。

…大丈夫だよな

確かめるように上唇と下唇を交互に食むように味わうと少しだけ唇に隙間が生まれる。

どうかこのまま受け入れてくれと願いながら舌をゆっくりと差し込むと

璃子は一瞬体を強張らせながらも遠慮がちに受け入れてくれた。

言葉にはしないけど心で言葉を紡ぐ。

…今から大切に抱くよ。

「好きだよ。」

初めておまえを抱いたあの日よりも…

「私も…大好きです。」

最後に抱いたあの日よりも…

「首に腕を廻せる?」

華奢な腕が応えてくれると

「しっかり掴まれよ。」

プリンセスのように大切に抱き上げてまっすぐに寝室へと向かった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ