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好きなんですけど、こっちは

第1章 信じていいですか? sideN

信じていいですか?

隣りで気持ちよさそうに眠る彼の横顔に問いかける。

「ねぇ、信じていいですか?」

無論、返事はない。
うん、それでいい。
昨晩の獣じみた男と、安らかな天使が同一人物だなんて思えなくて…薄く笑ってた。
「んん…ニノ…」
あなたの夢に俺はいるの?

彼のスマホのディスプレイが光る。
なんで、LINEの通知ONにしてるかな…。
全部見えてるじゃないか。
誰とどんなやり取りしてんのか。

潤くんはモテる。
男からも女からも。
だから、外にいるときはみんなの潤くんで…家の中でもみんなの潤くんで。
俺だけの潤くんな時間なんてない。

だから、せめて夢の中だけは縛らせて。

「ニノ…どうした?」
彼が目を開ける。
「こっち…おいで。」
筋肉質な腕が伸びてくる。
わずかに身をよじると、彼の腕に力がこもる。
「あの、ちょっと…待って。」
「なに。」
その顔、その声、反則だって。

「俺はニノのもんだよ?」
あのさ。
俺、潤くんの言葉信じるしかないんですけど。
信じていいの?
ねぇ。

「…不安?」
「別にそんなことはないですけどね。」
潤くんが困った顔してる。
ああ、もっと困らせてやりたい。

愛情って醜い。

「じゃあさ、ニノ。ニノのものって印、つけなよ。」
綺麗なうなじを俺の前に差し出す。

「ほら。」

あのさ、こういうのも違うと思うんですけど。
違うとは思ってるんですけど、つけてもいいですか?

唇をうなじにつけて…やめた。
「信じていいですか。」
声が震えてた。
俺のこと、信じれないの?って責められてしまう気がして、目を閉じる。

「信じなよ。」

甘く低い声が耳朶をくすぐった。

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