テキストサイズ

恋人は王子様…!

第1章 あの人、ワタシの彼氏です。sideN

お昼休み開始直後。
人で溢れかえった食堂の隅で、人目を避けるように身を縮めてご飯をかきこむ。

「ねぇ、☆大の学祭行かない?」
「えー、行きたい!」
「行こ行こ!」
派手な女子の集団が華やいだ声で騒いでいる。
「今年の☆大のミスターにヤバイ人出るらしいよ?」
「あ!聞いた聞いた!」
「松本くんでしょ?」
「生で見たいよね!」
「見たい!」
こんな会話を聞くのは今日で何回目か。
☆大のミスター最有力候補。
容姿端麗。
絶世の美形。
完璧超人。
彼を形容する言葉はどれも圧倒的だ。

〜♪
スマホのディスプレイが光る。
『潤くん:今週末ヒマ?』
ヒマ?
っていうか、あなた、学祭でしょ?
『潤くん:一緒に学祭まわんない?』
…目立つでしょうが。

無邪気なLINEの主は女子たちの注目の的の男。
『人が多いとこ、苦手だしいいです。』
これは本音。
ゲームしてた方が楽しいし。
『潤くん:え、見に来てくんないの?』
『んー…』
『潤くん:ニノとおばけ屋敷はいりてーし、屋台食べたい』
すごいキュンキュンするけど…難易度高いよ。
『潤くん:俺のおごりで行こーぜ?』

この悩みは贅沢なんだろうな。

小さくため息をつく。
世の中に松本潤と並んで歩きたい人はどれほどいるだろう。
それを躊躇ってるなんて。

だって、目に見えてる。
潤くんと学祭まわってて、潤くんの知り合いに会ってさ?
何こいつ、潤の知り合い?みたいな目で潤くんが見られて、
潤くんは無邪気に「すげー仲良いの」とか言っちゃう姿。

『今週、体調悪くて。ちょっと休んでたいんだよね』

潤くんに迷惑かけたくない。
でも、みんなが潤くんの話してるの聞くたびに優越感感じてる。

あの人、俺の彼氏だよ。
俺の待ち受け、潤くんの寝顔だよ?

こっそり秘めてるだけでいい。
誰にも言わない。
1人の秘め事に。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ