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路地裏酒場の占い師

第1章 あ、忘れてた!「お題小説参加作品」(ここに書くな!)

 私は、夢の石を片付けた。

「来年、クリスマス? へぇ~、キリストが復活すんの」

 店の照明の半分を消した。

「笑えませんか?」

「えっ?」

「僕、実は芸人やってるんです」

「芸人さん……」

「毎年、クリスマスには、所属事務所内の5年未満の芸人が、ネタで芸を競い合って、コンテストをするんですよ」

 私は、夢の石を出した。

「優勝したら、社長から大きなチャンスを頂けるんですよ。それで売れた先輩、後輩、たくさんいます。僕は、来年がラストなんですよ。でも、今年、結果が出なければ、両親に実家の農家を継げと言われてまして」

「なるほど。漫才をされてるの? お一人でやってはるの?」

「昨年まで『ボケツッコンダーズ』て、コンビを組んでました。解散して、今はピンです」

 コンビ名で、すでにウケない空気出してる気がする。

「だから……僕は、今年、結果を出せるかどうかを占ってほしいんです。僕は、芸人を続けられるのかどうか……」

 私の心には(無理ね)としか言えなかった。キリストが復活するって、どこが面白いの?

 そんなのは、ノストラダムスがやっちゃってるから、もうウケないわよ。

 でも、あくまで結果を語るのは、この不思議なクリスタルの夢の石。

「わかりました。見てみます。しばしお待ちを……」

 私は丸い透き通った夢の石に、手をかざした。

 じんわりと、映像が映し出される。

「見えました」

 見えたのは……黒洲さんが、ボロボロの姿でブルーシートで作ったテントの中で寝そべっている姿だった。

 私は……それを話した。結果は、結果だから……。

 黒洲さんは、うつむいた。

「そうですか……やっぱり、続けていくと、結果、落ちるところまで落ちるんすね……やっぱり、諦めるしかないか……」




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