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路地裏酒場の占い師

第1章 あ、忘れてた!「お題小説参加作品」(ここに書くな!)

 私の名前は、水龍謎孔。以下同文。

 さっきのしゃちほこはなんなの?

 しゃちほこになりたいって、占いでどんな答えを求めようとしたの?

 そんなの夢の石を使っても、正解なんて出ないわよ。


 深夜0時。もう、店じまいね。

 だけど、もう一人、スーツ姿の中年男性が残っている。

「すいませんお客さま、もう閉店なんですよ」

 そう言うと、男性は虚ろな目で私を見た。

「占ってもらえんか?」

 男性は、か細い声で、そう言った。

 占いなら、少しくらいはかまわない。

「占うんですか? いいですよ。こちらへ」と私は、端の席へ、移動を促した。

「助かります」

 頭を下げると、薄い天頂部が見える。

 私は男性と、向かい合わせとなる。

「どうされたんですか?」

「来年の……クリスマスにね……」

「クリスマス……ですか?」

「ええ……」

「来年のクリスマスになにか?」

「んん……いや、やめようかな」

「どうしました? 教えて下さい」

 今年のクリスマスではなく、来年のクリスマス。なにがあるのだろうか?

「とりあえずお客さま、お名前と生年月日を教えて下さい」

「黒洲参太。昭和60年の」

「え、え、昭和? 60年て……まだ30代?」

 見た目、どう見ても60は越えている。

 男性は自分の免許証を差し出し、私に見せた。

 偽造かと思うくらいに、そのままだ。

「えっと……黒洲さん、でしたね。来年のクリスマスになにが、あるんですか?」

 見た目と年齢のギャップに動揺しながらも、私は聞けることを質問した。

 黒洲さんは、うつむきながら肩を揺らした。

「来年のクリスマスに……イエスキリスト様が、復活するんです」

 今日は、困惑が続くわね。


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