どうして私だけ…
第1章 生活
部活が終わって、
スパイクシューズの紐を解いて
ローファーに履き替えて、
ポニーテールもほどく。
髪の毛先から、微かに
土の匂いがする。
ラインカーを倉庫に片付けた頃には
あたりはもう真っ暗。
純奈はスクールバッグの紐を
リュックのように背負って、
スパイクシューズを片手に持って
校舎に向かって歩き出した。
「小松原」
後ろからの声に、ハッと振り返る。
隣の倉庫から出てきたのは、
サッカー部の顧問の速川先生。
真っ黒く日焼けした腕に、
昼間と同じ緑のTシャツ。胸には赤い笛。