テキストサイズ

もっとぐちゃぐちゃにして、

第5章 忘れるくらいに愛して

お腹が空いた感覚とともに意識が浮上した。見慣れない天井に、匂い慣れない布団の香り。あぁ、そういえば、昨日そのままシちゃったんだった。

「…ん……」

まだ眠そうな声に目を向けると佐野さん、もとい秀さんが眠っていて、あどけなさが残る寝顔を見てるととても27歳には見えなかった。…昨日、ゆきって呼んでたな。そのまま眠ってしまった私には彼がどんな表情をしていたのかもわからない。ただいえるのは、きっと体の関係だけの私が踏み込んでいいものではないということ。

もしかしたらこれっきりかもしれないし、忘れたふりでもしておこう。そう高をくくったものの、ずっと気になってしまう。勝手に寝入ってしまった体だけの関係に対して、セックスの事後処理までしてくれるような優しい人だ。きっと、何か言い知れぬものを抱えているんだろう。名前を呼んで、とせがんだとき、悲しそうな顔を見せたように。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ