テキストサイズ

無表情の宇野くん

第84章 五味さんと旅館の夜⑤。

お風呂も終え、しばしの自由時間も終えてしまい(トランプをがっつり一時間盛り上がってしまった)、早くも消灯時間になってしまいました。


修学旅行の感想みたいなのを書いて、夜十時、部屋の電気は消され、真っ暗になった。


班員それぞれの目が、猫みたく見えるだけで、他はなにも見えない。私の下着くらいしか見えない。


私は、天井を見上げ、今日のことを振り返る。


奈良に行く途中、東京を通るのだが、東京に着いて、初めに五味さんが言った台詞。


「わー、都会だ、すげー! 見てみて、ドン.キホーテがあるよ!!」


私たちの住んでる町にもあるわ、と突っ込んだものだ。


コンビニではなく、ドン.キホーテなところに五味さんのセンスを感じる。


宇治に行った時、やはり昼食はなににするか右往左往して、結局みんなでたこ焼きを食べたりしたな。


空腹は治ることない食事だったけど。


それと、さっき四人でババ抜きした時、宇野くんが私にババを引かせたくて、ババ以外に力入れて抜かせないようにしたり。


あれはもうカードゲームではなく、単純な握力勝負だもの。


と、私は一人そんなことを思い出しながら、こんなくだらないけれど、楽しい日々が、一生続けばいいなと、そう思う。


しかし、卒業まであと数ヶ月。他とは違うが、私たちの学校は、最後の行事が修学旅行。つまり、もうこの日々も終わりを迎える。


宇野くんを追いかけ回すのも、五味さんと楽しくお話しするのも、大毛さんと腕相撲したりするのも、これでもう終わり。


悲しくなるが、これがみんなで行く最後の遊びで、最後の旅行で、最後の、戯れなのだ。


これが終わればテストを受け、それが終わればもう学校なんて行くことはできないのだから。


中学校、中学生最後の行事を、私は明日も楽しもうと、そう思い、身体を横にして眠りについた。


朝起きて、仰向けに眠っていた五味さんが、起きた時にはよだれを垂らしていたというのは、軽く噂になっていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ