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巡る季節をあなたと

第3章 花火

sideM

花火大会、行きませんか?



楽屋で和と二人の時だった

帰ろうと思って、ソファから立ち上がった瞬間に服のすそを掴まれて、そう…言われた

「和、あんな人混み苦手なんじゃ…」
冗談だろ?と笑いながら、彼を振り返って言葉を止めた

和の耳は真っ赤で…小さく震えていたのだ


「え、あ…まじで?」

「潤くんと…行きたい」

「うん…行こっか」


花火大会の会場は案の定、すごい人で…俺はまだしも和はすでに人酔いしていた。

「大丈夫?」

「うん、大丈夫」

…じゃないだろ。

「ちょっと…」

手を引き、屋台の列からも人混みからも逃れる

「潤くん、花火遠くなってますよ?」

「少し離れたとこで見ない?」

ほら、はぐれたら心配だし。
疲れさせたくないし。

「…そだね」

あれ?なんで不満そう?

「どうかした?」

「ううん、なんでも!」

ならいいけど…。

一瞬曇った和の横顔はいつも通りで。

俺は和みたいに察しがいいわけじゃないから言ってくれないとわからない。

でも、何かあるなら和は言ってくれるはずだ。

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