テキストサイズ

巡る季節をあなたと

第2章 相合傘

sideN

傘を忘れたあの人を見た



コンサートの打ち合わせを終え、ホテルに戻ってきた

あの人だけ、まだスタッフと話があると残って、まだ帰ってきていない

心配になって、会場に戻ると…雨に打たれながらステージを眺める彼がいた

「潤くん!」

彼が振り返る

「風邪ひくよ…傘」

「ありがと」

雨に濡れていつもより色っぽい潤くん

「まだ、帰らないの?」

「先、帰ってていいよ」

帰れるわけないよ

潤くんに傘をさして、ひたすら彼についていく

「ちょっと違うなぁ」
「こうかな」
「すいません、照明の角度なんですけど」

真剣な潤くんかっこいい

思わず見惚れていた

潤くんと相合傘をして、近くで潤くんを見上げて幸せだ

一心同体みたい、なんてドキドキしながら彼の動きにあわせていた時だった

「二宮さん、大丈夫ですか?」

突然、スタッフに声をかけられた

「え?」
「二宮さん、濡れてますよ」
気づくと傘は潤くんの上にしかなくて、俺は濡れていたらしい
「松本さん、傘どうぞ。二宮さん、風邪をひくといけないので…」
「あ、はい。帰りマス」

なんとなく寂しい気持ちでホテルに戻った

なんだ、相合傘できてなかったじゃないですか

潤くんへの想いが強すぎて、潤くんに傘をさすことしか考えてなかった

自分で勝手にしたお節介なはずなのに、一方通行な感じがすごくて…

「寂しいなー」

とぼとぼホテルの廊下を歩く

「ニノ?」

後ろから優しい声

「翔くん」

「すげー濡れてる、大丈夫?」

「うん」

「今から部屋こない?シャワー貸すし」

「いや、自分の部屋で入るよ」

「てか、来てほしいんだけど。さっき、ここで有名って言われてる饅頭買ってさ。一人で食べるのもあれだから」

「じゃあ行く」

まあ、今一人でいるのも嫌ですし。

「ニノ、どーぞ」

翔くんは俺がついてきてるか振り返って確認してくれる
翔くんは扉を開けて中に入れてくれる
翔くんはさらっと気遣いができる

…甘えさせてくれないかな

潤くんに感じた寂しさがドバーッと噴き出した瞬間、翔くんに抱きついていた

翔くんの服にも染みができる

翔くんは何も言わずに頭を撫でて、タオルを貸してくれた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ