あと3秒だけ。
第12章 お忍びデート。
『貴久さんは、・・・ズルイよ。』
ぎゅうっと抱きついた。
人目を気にしながらしかできないデートを、
貴久なりに考えて
今日ここに連れてきてくれたことが
本当に嬉しくて。
貴久も私の背中に腕をまわし、
片手で頭を優しく撫でてくれた。
『貴久さん・・・、ありがとう』
『今日は、珍しく甘えん坊だなあ』
『えっ。珍しく・・・?』
『ふっ。素直で可愛いってこと。』
『まるで、いつもは頑固みたいな言い方…』
『違うよ。有紗は優しいから、周りの人の意見を尊重して、本当は言いたいことがあっても言わないでしょ?最初初めて見た時に、この子無理してないかな?って思ったんだけど、でも日が経つにつれて“あぁ、この子は無理してるんじゃなくて空気を読んで、気配りが出来る子なんだ”って気づいたんだよね。だから、そんな有紗が今日俺のことを欲しいって言ってくれた時、本当に嬉しくてさ・・・。何て言えばいいか分からないんだけど……俺には素直になっていいんだからね。』
この人は私のことをきちんと見てくれてるんだ。
私のことをこんなに理解してくれて
愛してくれて優しい人が
私の好きな人で本当に良かった。