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あと3秒だけ。

第20章 左手薬指。


『妻のところへ向かうまでの道のりで、俺はずっと思い出していた。忘れかけていたけど、妻は少し強がりで、いつも自分のことよりも相手のことを気遣う人なんだ。俺は自分、自分.....って自己中だけど。久しぶりに見た妻のお腹は大きくなってて、俺は全く知らなくて。あの日も俺に連絡をくれたのは義理母で、ちえみは仕事が忙しいだろうと俺には連絡してこなかった。きっと、義理母が教えてくれなかったら、妻はひとりで生むつもりだったんだろうな…。目の前で新しい生命が生まれる瞬間を見て、俺は本当に今までの自分を悔やんだ。妻や、子ども・・・…家族への罪悪感で押しつぶされそうになったんだ。』

目の当たりにする貴久の気持ちに

私は何も言えず

ただただ耳を傾けた。

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