あと3秒だけ。
第20章 左手薬指。
『私.....貴久さんと連絡も取らず、カンケイも無くなって.....きっとあの日以来貴久さんは心を入れ替えたんだろうなって思ってました。だから、自分の中でも少しずつ貴久さんが小さくなってて.....でも、今日の異動の発表で分かったんです。私、全然貴久さんのこと忘れれてない。好き・・・って。だから、今日会うってなった時に、少しワクワクした自分がいたの.....。笑っちゃいますよね…ハハ。でも、貴久さんの左手薬指にはめてある指輪で、もう分かりました。』
『有紗.....』
『私なら大丈夫です!全然平気・・・。そもそも、私たちのカンケイは貴久さんの身勝手で始まった訳ではない。私だって貴久さんに家族があることを知った上で好きになり承諾した.....責任なら私にもあります。むしろ、貴久さんがちゃんと家族を大切にできる人で、良かった・・・って思います。』
視界が少しぼやけてくる。
だけど、ここで泣いてしまったら
後味悪くなるし
貴久に迷惑をかけてしまう。
涙がこぼれないように
私は目に力を入れていた。