あと3秒だけ。
第20章 左手薬指。
貴久は掴んでいた私の手を引いて
思い切り私を抱きしめた。
ふわっと香る柔軟剤のこの香り.....
懐かしくて、懐かしくて。、
今まで我慢していた涙が零れ落ちた。
『有紗にこんなこと言わせる俺、最低だな.....。有紗はやっぱり、 ・・・・・・優しいな。』
もうダメ。
涙がどんどん溢れてくる。
我慢しようとしても、
気持ちとは裏腹にどんどん溢れ出る。
きっとこのままいたら、
私、諦めきれなくなる。
『あ、私っ!観たいドラマあるんですよね…そろそろ帰りましょっか!!』
貴久から思い切り離れた。
見え見えの嘘。
だって時間は0時を回ろうとしてる。
『・・・わかった。』
貴久はゆっくりと、車を走らせる。
私はずっと貴久を見れないまま。