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半ば強引ではございますが……

第1章 7月12日の夜10時

 すると、うちの嫁さんが……

「あ、お帰りなさい。見て~♪」と、指を差す。


 そこには、扇風機の風で揺れる、風鈴が……。


 買ってますやん……。

「これ買ってきてん。いいでしょ~♪」


 金魚の絵が涼しげな、ガラス製の風鈴。

「いくらしたん?」

「340円」


 負けてますやん。


 こっちは、100円。プラス消費税でも勝ててませんやん。

 それどころか、お菓子とドリンクの分をたしても負けてますやん!

「うちらの寝室にもつけたから」

 
 2個も買うてますやん。


 108円のやつ、出せませんやん。 


 変なところだけ、同じことすんなや……。

 でも、出さないわけには、いかない。

「俺も買うたんや」と出した。


 今見たら、ちゃちい……。

 これが、3倍の差かね。

 嫁さんは苦笑いから大笑いしてますやん。


「せっかくやし、これ、ベランダに飾っておきましょ」

 ベランダね。





 聞こえませんやん。普段、閉めきってますやん。

「私、洗濯物干したり、ゴミをまとめたりするとき、よくベランダ出るから」


 僕、聞けませんやん。せっかく買うた音色、聞きたいですやん。



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