テキストサイズ

半ば強引ではございますが……

第1章 7月12日の夜10時

 そこにいたのは、大人になった白い毛のハムスターでした。

「えっ、なんでここにおるん?」

 部屋に入れて、明るいところで見たらよくわかる。

 どこを冒険してきたのか、汚れてんだよ。後ろ足の片っ方の爪をどこかで痛めたんだろうね。血がついてました。

 嫁さんがハムスターの背中を撫でて、こう言った。

「あんた、迷子になったん? どこから逃げてきたの?」

 !!!!!!!!!!

 なんですってぇ!?


 そうですよ、迷子ですよ。このハムスター、迷子になったんですよ。

 迷子にしておきましょう。

 いや、正直ね、お題小説参加してなきゃ、風鈴と迷子のキーワードにピンと来ないですよ。

 しかも、まだ企画続行中に、現実にお題が並ぶことって……自分の中では奇跡でした。

 でも、実際に気が付いたのが、風呂に入ってた時ですけどね。

「迷子のハムスターかぁ……」と、呟いた時にピンときたんですがね。嫁さんが言った時には、さらりと聞いてたんですよ。

 で、このハムスター。すぐに飼い主が見付かりました。

 マンション1階の掲示板に、手書きのチラシが貼ってありまして、なんと、上の階の方が飼ってたハムスターだったんですよ。

 その日の昼過ぎに、ゲージを掃除している時に脱走したようです。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ