君がいる風景
第1章 落とし物
自転車の停めてある周辺を念入りに探してみたけど
やっぱねえよなぁ
猫背気味な背中を大きく伸びをして
とりあえず交番に行って届け出がないか訊ねてみることにして、無ければ紛失届けを書くつもり。
自転車はそのままに駐輪場に置いて歩いて向かうことにする。
立ち止まるのはいつもの場所
自転車置き場のすぐ横にあるちいさな祠
別に神様ってものがっつり信じるつもりは
ねえんだけど、その祠にはなんとなく朝晩
手を合わる真似事みたいのことをしてるんだ。
今朝は走りながら頭だけ下げてた。
今日もいつもの如く手を合わせて1日無事だった
ことに祈ってると
目の前に飛び込んできたのは
お供え物として置いてあるイチゴチョコと
見覚えのあるサメのキーホルダーの鍵。
目をこすってみて見間違えかどうかを
もう一度凝視してみると
どうにも俺の鍵によく似たもの
手を合わせて謝りながら
それを手にしてチャリのところまで
走っていって鍵をいれてみると
ガチャリっっ
「マジかよ!やっぱこれ俺んじゃん?!」