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君がいる風景

第5章 夕飯



翔ちゃんのマンションを通り過ぎて曲がり角を
曲がってからの長い上り坂を自転車をおして
2人並んで歩いてく。

「ねぇ、この坂道って
智くんちまで自転車で登れるの?」

「当然っ!」

「すっごいね…
けっこうな長さと、キツさだよ?」

「だろ?
坂道降りてくときは一瞬だけ風になれる気がするぜ。
ガキの頃からの道だし、俺はもう慣れてるし」


「俺…絶対途中でへこたれるよ」


シャッターの下りてる曲がり角にある店まで来た
ここを曲がって更にきつくなる坂道を上っていく。


「この店のパンがさ、めっちゃ上手くって。
俺がガキの頃にパン屋になりたいって思った店。
けど、おやっさんが身体こわしちまって店畳んだんだ」

「この町内には智くんの思い出や夢がたくさん
詰まってるんだね。
俺、この町がすごく好きになりそう」

「そっかぁ、じゃあこの坂道も好きになれよ」

「えぇぇ!」


2人で顔を見合わせて笑った。

木々の生い茂る古びた門を開けて玄関まできた。
いわゆる瓦屋根の古めかしい日本家屋
家の中はおふくろがかなりリノベーションした
から不便は特にない。
昔は土間があって薪で風呂を沸かしてたって
笑い話も聞いたことはあるけど
俺がこの家に暮らす頃にはもうしっかり現代風に
なってた。

息が上がってる翔ちゃんが驚いた顔をしながら
我が家の外観を見つめてる。



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