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君がいる風景

第5章 夕飯



「いねぇなぁ。もうずいぶん恋愛もしてねぇかも。
翔ちゃんはたしか片想いしてたんだっけ?」


「えっと…あっ…あのね…
うんっと…智くんに………」




一瞬の沈黙の間

言葉が途切れたのはほんの3秒くらい
まさかそこで自分の名前が出てくるなんて思ってもみなかったから、翔ちゃんと見つめ合ったまま
その僅かな時間に鼓動が跳ねた気かした。


「…えっ?」

「あっ、あのね…えっと
智くんによく似た…優しくて…
なんでもできる人なんだ」


「俺ぇ?!
それってダメなヤツじゃん。」


「智くんはダメなヤツじゃないよ!
俺なんて料理も出来ないし、絵もへただし。
釣りなんてやったこともないし。運動オンチで
高所恐怖症で…」

「ンなことねえよ。
翔ちゃんにも出来ることたくさんあるじゃん。
俺なんて本触るのもイヤだし。
勉強が嫌いで高校中退してふらふらしてるの
まずいからって、
じゃあパン職人にでもなるかって今のとこで
働いただけだし」

「じゃあ智くんに、料理教えてもらって
釣りにも連れてってほしいな」

「ああ、いつでもいいぜ。
って言っても俺もこの程度しかできねぇけどさ。いつでもうちに来いよ」

「うん、ありがと。じゃあ約束」


差し出してきた小指。
あの日の飲み会の約束がよみがえってきた。


いや、もっとずうっと昔のガキの頃に…
どこかで
ゆびきりげんまんで約束した相手がいたはずなんだけど…


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